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特養は要介護3以上でないと入居できないのですか?(要介護1・2の方でも入居できる道があります。)
1 はじめに
施設見学のご家族様から「特別養護老人ホーム(以下「特養」という。)は要介護3以上でないと入居できないのですか?」とのご質問をよく受けます。今回、要介護1・2の方でも入居できる場合を規定している特例入居(所)制度について、お話したいと思います。
2 特養の入居要件が要介護3以上となった経緯
平成27年(2015年)4月から介護保険法が改正され、特養の入居対象者は、原則、要介護3以上と規定されました。この法改正の背景には、受け皿(特養)が不足している都市部を中心に全国で入居待機者が50万人超にも上っていたことに加え、介護給付費の増大を抑えたい国の意向が反映されたとも言われています。
3 特例入居(所)とは
もっとも、要介護1・2の方でも入居できる道があります。これが今回話題とする「特例入居(所)」です。特例入居(所)は、要介護1、2の方でもやむを得ない事情で特養以外での生活が困難であると認められる場合に、市町村の適切な関与のもとで入居することが可能な仕組みです。その要件は、以下の4点です。
①認知症であり、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さなどが頻繁に見られる。
②知的障害、精神障害等であり、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さなどが頻繁に見られる。
③家族等による深刻な虐待が疑われることなどにより、心身の安全・安心の確保が困難である。
④単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分である。
4 高齢者人口の減少で空床が目立つ地域も
改正から7年が経過した令和4年(2022年)4月時点の全国の特養への入居申し込み者は、27万5千人でそのうち特例入居(所)の申し込み者は2万2千人となっています。その前の調査(令和元年(2019年))時は32万6千人中、特例入居(所)の申し込み者は、3万4千人となっており、特養入居申し込み者自体が減少している状況でした。これはサービス付き高齢者住宅、認知症グループホーム、有料老人ホームなどの居住系サービスの供給量拡大の影響もあると言われています。さらに、郡部を中心とした地域によっては高齢者人口が減少しているため、常に空床が生じている特養も散見されとの見解もありました。
そのような中、要介護3以上でないと入居できないという原則を厳格に適用し、特養に空きがある状況で、要件を満たしているにもかかわらず、入居が認められないケースがあるという指摘もありました。このため国においては、令和4年 12 月 20 日の社会保障審議会介護保険部会の「特例入所の趣旨の明確化を図るなど、地域における実情を踏まえた適切な運用を図ることが適当である。」を踏まえ、令和5年(2023年)に「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針についての一部改正について(通知)」(令和5年4月7日付け厚生労働省老健局高齢者支援課長通知)を発し、指針を改正しています。
5 要介護1・2で直ぐに特養に入居したい場合
要介護1・2の方でも、特例入居の要件に該当すれば特養への入居は可能です。しかし、入居待機者を抱える特養では、どうしても介護度の高い方から入居を進めざる得ない状況にあります。したがって、狙い目としては、待機者の少ない特養(郊外・郡部の特養)なども候補に入れることも一考だと思います。高速道路網が発達した現在、車で1・2時間程度、走るだけで、待機者数の少ない特養も存在します。近くの特養で要介護1・2という理由で、「申し込みされても入居まで時間がかかります。」や「当施設での受け入れは困難です。」と言われたご家族様は、少し範囲を広げて、郊外(郡部)の特養もご検討いただければ、道も開けると思います。





